新顔の寄生虫症・クリプトスポリジウム症

 

1.クリプトスポリジウムとは?

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium:以下Cr)は、胞子虫類に属する原虫です。消化管に寄生して、腸粘膜上皮細胞の微絨毛中で無性生殖と有性生殖を繰り返して増殖し、宿主の体外には、オーシストと呼ばれる感染型の形態となって排泄されます。

(写真:Cryptosporidium parvumのオーシスト)

Crは、ヒト以外に牛、豚、山羊、羊などの家畜、家禽 (ニワトリ)、犬猫などのペット、ネズミ等多くの哺乳類に寄生する人畜共通の寄生虫です。
Crのなかでもヒトへの病原性で最も重要視されているのは、小型種と呼ばれている Cryptosporidium parvum です。

 

2.オーシストの抵抗性

乾燥や熱には弱く、数日の乾燥や70℃で10数分間の加熱で死滅します。
塩素、アルコール、クレゾール等の消毒薬では死滅しません。

 

3.汚染源及び感染経路

犬、猫、牛、豚、ネズミ等のヒトと生活圏を共有する身近な動物は、汚染源になる場合があります。 
ヒトは、感染動物の糞便中に排泄されたオーシストで汚染された手指や生鮮食品等によって感染します。時には、汚染された飲料水によって感染することもあります。
ヒトが感染した場合、1日に10億個、仔牛や仔羊では100億個のオーシストを排泄します。排泄されたオーシストを数個程度摂取するだけでも、ヒトは発症すると言われています。

 

4.症状

3〜6日の潜伏期の後、激しい水様下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱等を呈しますが、通常は1〜2週間で自然治癒します。しかし、免疫機能が低下しているヒトでは症状が重く、下痢が長時間持続し、致命的になることがあります。

 

5.Cr症の発生状況

Cr症は、1976年に米国で初めて報告されて以来、1980年代には後天性免疫不全症候群(AIDS)の致死性下痢症の原因として注目されてきました。その後、1993年には米国のミルウオーキー市で水道水を介して人口80万人のうち、40万人が感染し、約4,000人が入院する事件が発生し、先進国・発展途上国問わず発生する寄生虫症として問題視されてきています。
我が国では、1986年に下痢症の患者から初めてCr症が報告されて以来、海外渡航者等からしばしば検出され輸入寄生虫症として報告されていました。しかし、1994年に神奈川県平塚市の雑居ビル内で水道水を介する集団発生(461人)が報告され、1996年には、埼玉県越生(おごせ)町の町営水道水が原因となり9,000人余(人口の約70%)の下痢症が発生し、厚生労働省では、1996年10月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(1998年6月一部改正)を定めている。

 

6.国による行政的対策

厚生労働省は、1996年から全国的な水道原水や河川水の調査を開始しました。その結果、当初5県の水道原水からCrが検出されましたが、平成11年〜12年の調査では、11都道県の水道原水や河川水からCrが検出され、我が国の水道原水や河川水のCrによる汚染は、決して稀ではないことが明らかにされています。
Cr症は、1999年4月に施行された感染症法において4類感染症に指定され、2001年5月までに13例(国外感染8例、国内感染5例)が報告されています。
農林水産省は、1997年に牛、豚を対象とする全国調査を行い、牛で、2.14%、豚で1.10%の感染が明らかにされました。月齢別では、牛で1ヶ月未満に2.65%、1ヶ月以上に1.60%、豚では2か月齢未満に1.24%、2ヶ月以上に0.90%の感染が明らかにされています。
特に、感染牛が存在する牛舎では感染率が高くなり、恒常的な汚染の実態が指摘されています。また、仔牛への感染は、生後2週間前後からみられます。
 

 

7.沖縄県の現状

本県では、ヒトのCr症の発生は未だ報告されていませんが、水道原水からCrのオーシストが検出されたことがあります。
また、牛と豚からCrが検出されています。特に牛では、2週間前後の仔牛から小型種のオーシストが18.5〜27.3(平均21.1%)と高率に検出されています。
本県においても、上記のように汚染源は存在し、感染には十分注意する必要があります。

 

8.患者と汚染源動物のCr遺伝子解析

国立感染症研究所等の調査により患者から検出された22株、動物分離株12株の解析によって3種類(ウシ型、ヒト型、鳥類型)の遺伝子パターンに分類さています。

 

9.予防法

家畜、ペット等と接触したときは、手洗いをしましょう。
牛、豚等の飼育者は、糞尿の処理、管理を十分に行い、水道原水等を汚染しないように注意しましょう。
やむを得ず河川水、湧き水等を飲用する時は、必ず煮沸して飲みましょう。

参考文献

1. 国感染研、厚生労働省(2001)、病原微生物検出情報、Vol.22,bV(257)
2. 遠藤卓郎、他(2000):クリプトスポリジウム等原虫疾患に関する情報・資料集、厚生科学研究費、新興・再興感染症研究事業、pp34
3. 農林水産省畜産局衛生課(1999):家畜衛生週報,2480
4.

Uga et al(2000):Prevalence of Cryptosporidium parvum infection and pattern of oocyst shedding in calves in Japan,Veterinart parasitolog,94,27〜32.

 


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